「ごはん・お米とわたし」作文図画コンクール 「一粒一粒に心を込めて」

一粒一粒に心を込めて

壱岐市立郷ノ浦中学校 3年
横山 力蔵

 僕の家は、この壱岐で代々酒造りを営んでいます。杜氏の高齢化や大手企業の参入により、十年ほど酒造りをやめていた時期もありましたが、父の代になり、三年ほど前、酒造りを再開しました。
 僕も時々、父の酒蔵に行って、酒造りの手伝いをしています。酒造りの手伝いと言っても、お酒を造るために必要な道具をきれいに洗ったり、お酒のラベルを貼る作業です。
 しかし、中一の夏休み、この作業以外に僕にできることはないか、父に頼んで手伝わせてもらうことにしました。
 それは、麹室という室温三十五度の蒸し暑い部屋に入って、水分をあまり含んでいないパサパサ乾燥したお米を台の上に広げてほぐしていく作業です。このお米は、事前に水で洗米し、適温に冷ましてあったものです。お米同士が固まらないように丁寧に、何度も手でパラパラとほぐして、均一に広げていきます。
「お酒を造る作業は手を抜くとお酒の味にも影響するんだよ。」
と、父から聞かされ、慎重に行いました。麹菌の働きで、ほぐしていくにつれてどんどん手触りが柔らかくなってきます。デンプンが糖化していくからだそうです。作業をしているうちに、酒造りにとってお米がどれだけ大切なものなのか、指の先から伝わってくるようでした。ふと(そもそも酒造りをするためのお米は、壱岐の島で作られたものだろうか)という疑問がわいてきました。そこで、作業が終わった後、父に尋ねてみました。すると、
「お米は、その土地、その土地で気候や水も違うから、味や種類もたくさんあり、この壱岐で自分たちで一から米作りをする場合もあるけど、ほとんどが全国からお米を買って、そのお米で酒造りをしているんだよ。」
と話してくれました。僕の家の蔵では、山田錦という銘柄の米を使っています。それも等級の高いものしか使用しないため、壱岐のお米だけでは量が足りず、福岡などで生産されたお米を使っているそうです。
 その時、壱岐でも山田錦を作っていると聞き、田植えと稲刈りを手伝わせてもらうことにしました。初めての田植えは、ギラギラとした太陽が照りつけるなかで行われました。水田の水の冷たさや泥の中に足が溶け込むような感じに触れ、新鮮で楽しさを感じました。しかし、それも最初の頃だけでした。だんだん腰が痛くなり、何度も休憩をしたにもかかわらず、終わった後はクタクタでした。
 さらに、稲刈りの日。残暑が厳しく、暑さに悩まされながらの作業でした。機械で刈り取った後に残った稲穂を刈り取ったり、落ちている大事な稲穂を拾い集めたりしました。この拾い集める作業は案外時間がかかる地味な作業ですが、壱岐では山田錦が貴重であるため、とても大切な作業だったと思います。
 僕は、この米作りを通して、農家の方々が、一年間、一生懸命に一粒一粒のお米に愛情を持って作ってくださっていることを感じました。
 お米は、僕たちの毎日の食事に欠かせない食べ物であり、また、父たちが造っている酒造りにも欠かせない原料でもあります。当たり前のように身近にあるものだと思っていました。しかし、届けられるまでには、たくさんの人々の苦労があることを知りました。だから僕は、今まで以上に、お米を味わって食べるようになりました。そして、父の酒造りの手伝いをする時も、今まで以上に一粒一粒、気持ちを込めて、大事に丁寧に扱うようになりました。
 これからも、日々、農家の方々への感謝の気持ちを忘れずに、お米を大切に味わっていきたいと思います。そして、一粒一粒に愛情の詰まったお米で酒造りをしていきたいです。