長崎市立三川中学校教諭寺田剛司「いただきます」「ごちそうさまでした」たくさんある日本語の中でも、この言葉は特に美しいものだと思います。食材に、そしてそれが食卓に届くまでに心を尽くしてくださった多くの方々に対する感謝の気持ちが込められています。そういった伝統を積み重ねてきた結果、世界的にも評価されている和食をはじめ、日本人は豊かな食文化を持っていると言えます。しかし、一方、農家の後継者問題、廃棄による食品ロス、低い食料自給率と、国内食料事情に関して日本は大きな課題を抱えています。さらには今年の夏に米不足の報道があったのも記憶に新しいところです。そういった中で、「ごはん・お米とわたし」作文・図画コンクールは今回で四十九回目を迎え、小学生と中学生の皆さんから前年を超える二百八十九編もの応募をいただきました。応募してくださった小学生・中学生の皆さん、ご協力とご支援をくださったご家族の皆様、さらに地域の方々、学校関係の方々に心より御礼申し上げます。まず、作文の課題は、ごはんでおいしかったことや家族とのコミュニケーション、お米・ごはん食に関しての思い出や考えたことです。そして、審査基準は、ごはん・お米に関わる事項や問題点を年齢相応に正しく理解して表現できているか、自分の意見・感想を率直に述べているか、生活経験がにじみでているか、希望や明るさが感じられるかです。審査会では四名の審査員で厳正に審査し、県入賞・入選作品として二十一編を選出いたしました。県入賞作品については作品および講評をご覧ください。部ごとの全体講評は次のとおりです。Ⅰ部(小学校一年生~三年生)会話やお手伝いの様子が素直な文章で明るく生き生きと表現されており、お米作りや食事を通しての心温まる様子が目に浮かぶ作品が多かったです。さらに、そのときの気持ちが読む人に伝わるように、一つ一つの言葉を丁寧に選んでいる印象を受けました。Ⅱ部(小学校四年生~六年生)お米のおいしさを精一杯伝えようとする作品が多く、お米を使った料理や地域の特産米も具体的に紹介されていました。また、平和学習で戦時中の食料事情を学び、ごはんを食べられることへの感謝の気持ちを綴った作品も印象的でした。小学校高学年ということで、おいしいという感想だけを述べるに終わらず、食卓に届くまでの過程での人々の苦労などに思いをはせるなど、根拠を具体的に示すことによって説得力のある力強い文章になっていました。Ⅲ部(中学生)広い視野を持って、お米を中心とした地域や日本の農業について深く考察されていました。全校を挙げての活動を紹介した作品や日本の食料事情と食文化について言及している作品もあり、真摯な意見に頼もしさを感じました。また、語彙の選択や根拠の明確さも適切であり、表現力の高さが見られました。今回の審査を通して、ごはん・お米と家族の絆との深い関わりについて、私も改めて考える機会をいただきました。そして、今後とも本コンクールがごはん・お米の大きな魅力と可能性を伝え続けることによって、日本の将来を担う世代の皆さんに豊かな食文化を伴った明るい未来が訪れることを心より切に願います。 20作文部門審査総評
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