第44回「ごはん・お米とわたし」作文図画コンクール 『おにぎりと僕』

おにぎりと僕

壱岐市立郷ノ浦中学校 一年
栁原 誉世

 「ただいま。」
「おかえり。」
「おにぎりできてるよ。」
これは、学校から帰った僕と祖母の毎日のやりとりである。必ずといっていいほど祖母はおにぎりを作ってぼくの帰りを待ってくれている。
「今日の具はなにかな。」
口に入れる前の、おみくじを引く時のようなわくわく感がとまらない。僕の好きな具は、祖母特製の梅干しである。少し塩のきいたおにぎりと相性がよく、暑い夏にぴったりだ。しかも、壱岐のお米はおいしい。僕の家は田んぼがないので、お米は知り合いや親せきから買って食べている。お米は、僕の家にとって貴重なものだ。
 小学校の頃、地域の農協青年部の方の力を借りて、米作り体験をさせてもらった。その時は、草切りや田ほどき、水の管理はすべて地域の方がしてくださったので、僕達は田植えと稲刈りをするだけだった。それだけでも、田んぼと縁のない僕にとっては、楽しい経験となった。その思いは弟達も同じだった。
 そこで今年五月、「田んぼをつくってみよう。」と、弟達と田んぼを作る計画を立てた。母親に相談してみたけど「ふーん。」と、相手にしてもらえなかった。仕方がないので、自分たちで田んぼを作ることにした。苗は祖母の知り合いからもらえることになった。さっそく兄弟で、家の畑の横の草が伸び放題の場所を耕した。使っていない土地だったので土が固く耕すのはとても大変だった。やっと畳半分ぐらいの田んぼが完成。水は小さいタンクに貯水して使っていくことにした。苗を植えるのは経験したこともあって、スムーズにできた。しかし、ここからが大変だった。7月初め雨がほとんど降らず学校や部活で田んぼの様子を見に行くことが減った。気づけば、土が割れ稲の間に草が生えてしまっていた。虫がつかなかったのが幸いであった。それからあわてて水を入れに行ったが、一度割れた土に水をためるのは難しかった。固い土に生えた草を抜くのも大変だった。今は何とか稲が育ち四十センチほどまでのびてきている。穂がつくのが楽しみでしかたない。今年は、雨が降らなかったので農家の人も十分に苗から育てることができなかったという話をきいた。雨が降らないと
「やったー。今日も外で遊べる。」
と、僕の妹は毎日のように喜んでいた。しかし、雨を必要としている人もいることにはっとした。米作りには水も太陽も必要なのだ。米は、日本の四季の気候を生かした作物のひとつである。しかし、近年は梅雨期が遅かったり、暑い日が続いたり、遅い時期に台風がきたりと今までとは違った自然環境になってきているため、自然に左右されている。農家の人達の苦労は図りしれない。自分達の手で苗を育てたことで、米作りの大変さが分かり同時に、米がある食卓があること、当たり前に食べられていることをありがたく感じた。
 弟と計画して始めた米作り。収穫まであと少し。自分達の手で最後まで管理し、家族においしいご飯を食べさせてあげたいと思う。その時は、僕が大好きなおにぎりをつくろう。もちろん具は、祖母特製の梅干しで。